【実績紹介】学生と採用担当のマッチングサイトに関する法的サポート
- IT関連契約書リーガルチェック
- 個人情報・プライバシー保護
- 各種利用規約の作成業務
- 実績紹介
弁護士: 玄 政和
第1 ご相談内容
ご相談者より、自身の会社で、学生と企業の採用担当をマッチングする新たなサービス(以下「本サービス」といいます。)を立ち上げるので、利用規約の作成など、必要な法的サポートをお願いしたいとのご相談がありました。
本サービスは、①会員の学生が、掲示板上で、自身のプロフィールや関心事項、繋がりたい企業の業種などについて投稿する、②会員企業の採用担当が、興味のある会員の学生がいればメッセージを送る、③学生側も②の企業担当と話してみたい場合は、チャットツールで1対1でメッセージのやり取りができる、という機能を中心とするサービスでした。
ご相談を受け、当事務所では、以下のような対応を行いました(前提として、本サービスが職業安定法に定める職業紹介事業に該当しないことの確認も行っています)。
第2 対応事項
1 利用規約・プライバシーポリシー等の作成
本サービスの展開において、特にカバーしておきたい点をご相談者と協議しました。
協議の結果、利用規約に関しては、①出会い目的や営業目的などで使われることを禁止したい、②利用者の属性(女性、外国人、障がい者、LGBT 等)に関連して差別的言や取扱いを行う等のトラブルを避けたい、③企業担当と学生との間のトラブルについて可能な限り責任を負うことを避けたい、といった話がありました。
また、プライバシーポリシーに関しては、ご相談者より、大学生の会員を増やすために、協業先との間で会員情報を共有し、キャンペーンなども実施したいとの話がありました。
これを踏まえ、利用規約に関しては、①禁止事項に、上記のような出会い目的・営業目的での使用や、差別的言動を禁止するなどの規定を設ける、②本サービスは、企業担当・学生間が交流する「場」を設けるに過ぎないため、両者の間のトラブルについては当事者同士で解決するものとし、ご相談者は責任を負わない旨の規定を設けるといった対応を行いました。
また、プライバシーポリシーについては、一般的な規定のほか、前述の協業先との間で会員情報をやり取りすることについて、個人情報保護法上必要な本人(会員の学生)の同意を得るため、プライバシーポリシー上に、どのような場合にどのような業者に会員の学生のデータを提供するのかについて明記し、会員登録の際に同意を得る形としました。
2 ウェブサービス開発の業務委託契約書チェック
ご相談者は、本サービスを自社で開発するのではなく、他の開発業者に委託し開発する予定でした。委託先の業者からは、ウェブサービス開発に関する業務委託契約書の提示がありました。当該契約書についても、ご相談者に不利な内容がないか、トラブルを避けるために必要な条項(業務内容や業務実施期間、報酬の発生時期、知的財産権の帰属、契約の有効期間、免責事項等)についてチェックを行いました。
3 電気通信事業法に基づく届出のサポート
本サービスでは、前述の通り、学生と企業担当が、チャットツールを通じて1対1でメッセージのやり取りができるという機能を有しています。実は、このような1対1のクローズドな形で、利用者同士がメッセージをやり取りできる機能をアプリやウェブサービスに設ける場合、「他人の通信を媒介」するものとして、電気通信事業法に基づく総務省への届出が必要となります(こちらについてはまた別の記事でご紹介したいと思います)。
ご相談者にこの点を指摘したところ、自社が電気通信事業法の適用対象になるとは想定していなかったとのことでした。そこで、届出に必要な書類の作成など、届出に必要な事項について当事務所でサポートしました。
※総務省の関連ウェブページはこちら
第3 終わりに
以上の通り、あるサービスを新たに開始する場合、法的に対応しなければならない様々な事項が存在します。サービス開始当初は、費用的な余裕がなく、弁護士に相談をしないまま開始してしまう場合も多いと思いますが、しっかりとリーガルチェックを行わないと、①サービス開始後にトラブルが発生したが利用規約に関連する定めがなく、適切に対処できなかった、②個人情報の取扱いについてしっかりと定めていなかったため、利用者からクレームがきた、③そもそも必要な手続を行っていなかったため、行政から指導が入ってしまった、といった問題が発生する可能性が高くなります。
新しいサービスを検討している事業者様は、できる限り事前にご相談をいただければと存じます。