【実績紹介】人材紹介契約書(業務委託のあっせん)の作成

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弁護士: 玄 政和

顧問先の企業様より、フリーランスのIT人材について、人材を求めているIT企業向けに紹介し、紹介手数料を受け取る取引を新たに始めたいので、契約書を作成してほしいとの相談がありました。形式としては、雇用契約としての採用ではなく、業務委託契約としての採用を想定しているとのことでした。

人材紹介契約特有の規定として、①手数料の発生条件と計算方法、②求職者が早期に退職した場合の手数料返還に関するルール、③直接取引(求人企業が人材紹介会社を介さずに求職者を採用すること)の禁止、④オーナーシップ条項( 紹介した求職者が他のルートで企業に採用された場合でも、人材紹介会社が手数料を請求できる条件を定めること)等が定められることが一般的であり、本件においても同様の規定を設けました。

また、重要なポイントとして、本件が、業務委託契約として採用予定の人材を紹介するという取引であることを考慮して、職業安定法上の「職業紹介」に該当しないように配慮しました。

職業安定法において、「職業紹介」とは、「求人及び求職の申込を受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立のあっせんをすること」と定義されており(同法4条1項)、今回の取引が、取引先に対し雇用関係の成立をあっせんするものであると解釈されてしまうと、「有料職業紹介」に該当し、厚生労働大臣の許可を得なければなりません(同法30条1項)。無許可で有料職業紹介事業を行った場合は、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科されます(同法64条1号)。

そのため、契約書においても、雇用関係の成立をあっせんしているものであると受け取られるような文言(採否の決定、採用内定など)を用いずに、「業務委託契約の成立」といった形で、業務委託契約の成立をあっせんするものであることを明確にしました。

ただし、雇用契約であるか業務委託契約であるかは、契約書の文言で形式的に定まるわけではなく、使用者に使用され、賃金が支払われるという「使用従属性」があるかどうかによって実質的に判断されます。※使用従属性の判断には、①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③報酬の算定方法(労務への対価という性質を持つかどうか等)など複数の要素から総合的に判断されますが、詳しくは、旧労働省労働基準法研究会の報告書「労働基準法の「労働者」の判断基準について」(昭和60年12月19日)をご参照ください。

そのため、本件においても、紹介先の取引先が、具体的にどのような形態で業務委託契約の締結を予定しているのかについて事前に報告を求めることができる規定や、実質的に雇用契約であると判断されうるような形態での業務委託契約を締結しない旨の誓約を求める規定などを設けました。

人材紹介のような手数料を受け取る取引は、本業のシステム開発等の業務とは別の新たな業務として展開しやすいものであるため、気軽に始めがちなのですが、上記のような落とし穴もあるので、注意が必要です。自社が新たに始めるビジネスが法律に違反していないかご不安な方は、お気軽にご相談ください。