【2024年11月1日施行】フリーランス新法 ~育児介護等に対する配慮、ハラスメント防止措置~
- 各種法改正
はじめに
フリーランスとして働く方々を保護することを目的として成立した、フリーランス新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が、2024年11月1日に施行されます。
本法は、大きく分けて、取引の適正化に関する規定と、就業環境の整備に関する規定の2つで構成されており(全体像は、以前のコラム「【2023年5月12日公布】フリーランス新法」をご参照いただければと思います)、本コラムでは、就業環境の整備に関する規定のうち、①妊娠・出産・育児・介護に対する配慮、②ハラスメントに関して講ずべき措置について取り上げます。
①妊娠・出産・育児・介護に対する配慮
フリーランスへの発注者は、フリーランスからの申出に応じて、6ヶ月以上の期間で行う業務委託(契約の更新により6ヶ月以上継続する場合を含みます)について、妊娠・出産・育児・介護(”育児介護等”)と業務を両立できるように、育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければなりません(配慮義務。法第13条1項、施行令第3条)。
6ヶ月未満の期間で行う業務委託についても、そうした必要な配慮をするように努めなければなりません(配慮の努力義務。法第13条2項、施行令第3条)。
「必要な配慮」については、厚生労働省が定める指針(厚生労働省告示第212号「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」(”指針”))によれば、フリーランスからの申出を受けた場合に、
イ その内容等を把握すること
ロ フリーランスの希望する配慮の内容又は他に取りうる選択肢を検討すること
ハ 具体的な配慮の内容が確定した際にはフリーランスに対してその内容を伝え、実施すること
二 やむを得ず配慮が行えない場合にはフリーランスに対してその旨を伝え、理由についてわかりやすく説明すること
と定められています(指針第3の2)。
もちろん申出や配慮の内容は、個々のフリーランスの状況や業務の性質等によって異なりますので、実際の場面では、指針で挙げられている配慮の具体例を参照しつつ、個別に対応をすることになり、やむを得ず配慮が行えない場合には、その理由をわかりやすく説明することが求められます。
【配慮の具体例】
- 妊婦健診がある日について、打合せの時間を調整してほしいとの申出に対し、調整した上でフリーランスが打ち合わせに参加できるようにすること
- 妊娠に起因する症状により急に業務に対応できなくなる場合について相談したいとの申出に対し、そのような場合の対応についてあらかじめ取決めをしておくこと。
- 出産のため一時的に特定業務委託事業者の事業所から離れた地域に居住することとなったため、成果物の納入方法を対面での手渡しから宅配便での郵送に切り替えてほしいとの申出に対し、納入方法を変更すること。
- 子の急病等により作業時間を予定どおり確保することができなくなったことから、納期を短期間繰り下げることが可能かとの申出に対し、納期を変更すること。
- 特定受託事業者からの介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したいとの申出に対し、一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること。
②ハラスメントに関して講ずべき措置
フリーランスの発注者は、業務委託に関して行われるハラスメントによって、フリーランスの就業環境を害することのないように、フリーランスからの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければなりません(法第14条1項)。また、このような相談をフリーランスが行ったこと等を理由として、契約の解除等の不利益な取り扱いをしてはなりません(法第14条2項)
指針では、講ずべき必要な措置について、次のように定めています(指針第4の5)
イ ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、労働者への方針の周知・啓発
ロ フリーランスの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
ハ ハラスメントが生じた場合に事後の迅速かつ適切な対応
これら措置については、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法、労働施策総合推進法により、労働者に対するハラスメント防止措置を講じることが義務づけられていますが、こうした労働関係法令に基づいて整備している社内の体制等を、フリーランスに対しても、同じように適用するなどして対応することが求められます。