特商法・返品特約に関する留意点

  • 特定商取引法

弁護士: 松井立平

1 はじめに

ECサイトでの商品販売において、「特定商取引法(特商法)」の遵守は、事業者にとって避けて通れない重要な課題です。今回は、特商法上の返品特約に関して解説いたします。

2 返品特約とは

特商法15条の3は、通信販売について、原則として商品到着後8日以内であれば消費者は理由を問わず契約を解除(返品)できる旨定めています。多くの事業者が設けている「お客様都合による返品は不可」といった返品特約は、特商法15条の3ただし書の特約にあたります。

3 返品特約の表示についてのガイドライン

上記返品特約については、「顧客にとって見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること」が必要です(特定商取引に関する法律施行規則第9条及び第16条の3)。

令和4年2月9日に消費者庁が公表した「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」において、上記の認識しやすい表示の内容について例示されています。そこで、上記ガイドラインを基に返品特約の正しい表示方法について紹介いたします。

4 ガイドラインが示す「認識しやすい表示」のポイント

ガイドラインでは、返品特約の表示が「顧客にとって容易に認識することができる」といえるかについて、媒体を問わず共通する事項として、以下の3つの観点から判断されるべきとしています。

(1) 表示サイズ及び表示箇所

極端に小さな文字で表示したり、消費者が認識しづらい場所に表示したりすることは、認識しやすい表示とは言えません。

(2) 返品特約以外の事項との明確な区別

他の情報に埋もれてしまわないよう、例えば「返品に関する事項」といった表題を設けて区分するなど、他の事項と明確に区別して表示する必要があります。

(3) 特に重要な事項の明瞭な表示

トラブルの原因となりやすい「返品の可否」「返品の条件」「返品に係る送料負担の有無」といった重要事項については、他の事項よりもさらに明瞭に表示することが求められます。 具体的には、価格など消費者が必ず確認する事項の近くに、同じサイズ以上の文字で表示したり、色文字や太文字を用いたりするなどの方法が挙げられます。

5 インターネット広告における具体的な表示例

ガイドラインでは、インターネット通販における返品特約の表示について、消費者に分かりやすい表示・分かりにくい表示の具体例が示されています。

(1) 分かりやすい表示の例

各商品ページでの表示:「カートに入れる」ボタンの近くなど、消費者が認識しやすい場所に、十分な大きさの文字(例:標準設定で12ポイント以上)で返品に関する条件を表示する方法。

最終確認画面での表示:注文を確定する前の最終確認画面で、各商品の返品条件がマーク等で分かりやすく表示されており、クリックすれば詳細を確認できる状態になっている。

共通ルールの活用:「ご利用ガイド」などの共通ページに返品特約をまとめる場合でも、各商品ページや最終確認画面に「返品不可」「到着後〇日以内に限り返品可」といった重要事項を表示し、詳細ページへのリンクを設ける方法。

(2) 分かりにくい表示のおそれがある例

不適切な表示場所:返品特約の表示が一切ない、または何度もスクロールしないと見られないページの隅に表示されている。

不十分な表示方法:極めて小さな文字で表示されている、または他の規約の中に埋もれていて見つけにくい。

最終確認画面での不表示:最も重要な最終確認画面に、返品特約に関する表示が一切ない。

不明確な対象範囲:共通表示部分に「下着類、飲食料品等は返品不可」とだけ表示されており、Tシャツやサプリメントなどが対象に含まれるかどうかが不明確な場合。

6 まとめ

返品特約を有効にするためには、事業者は、消費者庁のガイドラインが示すような「分かりやすい表示」を徹底する必要があります。自社のECサイトの表示がこの基準を満たしているか、今一度ご確認いただくことが重要です。

表示方法に不安がある場合や、利用規約全体の見直しを検討されている場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、専門家である弁護士にご相談ください。