生成AIの社内ガイドラインの策定について
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弁護士: 玄 政和
はじめに
「社員が業務でChatGPT等の生成AIを使い始めているようだが、社内にルールがない」。ここ1年、顧問先のIT企業から特に多くいただくご相談です。生成AIの業務利用には情報漏えいや著作権侵害のリスクが指摘される一方、一律に禁止すれば業務効率や採用競争力の面で機会損失が生じます。重要なのは、禁止か放任かの二択ではなく、自社の実情に即した利用ルール(社内ガイドライン)を定めることです。本稿では、社内ガイドラインに定めるべき基本的な項目と、実務上の留意点を解説します。
1. なぜ社内ガイドラインが必要か
2. ガイドラインに定めるべき5項目
(1)入力情報のルール——「何を」だけでなく「どのサービスに」で線引きする
まず定めるべきは入力情報のルールです。ここで重要なのは、同じ情報でも、入力先のサービスの契約条件によって法的評価が変わるという点です。「個人情報は一切入力禁止」といった一律のルールは、一見安全なようで、実務の実態に合わず形骸化しがちです。
① 個人データ——プランごとの「学習不利用」とDPAの確認が出発点
② 営業秘密—秘密管理性を損なわない運用の徹底
③ 取引先からの受領情報—NDAの確認なしに入力しない
秘密保持契約(NDA)に違反した場合、相手方に対する債務不履行責任の問題となり、損害賠償にとどまらず取引関係そのものを失うリスクがあります。生成AIサービスへの入力がNDA上の「第三者への開示」に当たるか、委託先・クラウドサービスへの開示を許容する条項があるかは契約ごとに異なり、自社の判断のみで整理できる問題ではありません。近時は、NDA自体に生成AIへの入力の可否を明記する例も現れています。受託開発を行う企業では、顧客から預かるソースコードや仕様書の取扱いをこの項目で明確にし、契約上の手当てがない場合には入力しない扱いとするのが穏当です。
(2)生成物を利用する際のルール
(3)利用してよいサービスの指定
- 入力データが学習に利用されるか(既定の設定と、オプトアウトの可否)
- 入力データの保存期間と、事業者の担当者によるレビューの有無・範囲
- DPAの締結可否と、秘密保持条項の内容
- セキュリティ体制(ISO/IEC 27001、SOC 2等の第三者認証の有無)
- 生成物の権利帰属と商用利用の可否
- 準拠法・管轄
(4)業務ごとのリスクに応じた区分
(5)事故時の報告体制と見直し時期
3. 実務上よく見られる問題点
4. 「使わせるためのルール」という視点
まとめ
- 入力情報のルール(サービスの契約条件とセットで)
- 生成物の利用ルール
- 利用サービスの指定
- 業務ごとのリスク区分
- 事故時の報告体制と見直し時期