農薬散布ドローン─飛ばす前に確認すべき法規制
- アグリテック
弁護士: 柏原敬俊
はじめに
人手不足が進む農業現場で、農薬散布ドローンは省力化の有効なツールとして普及し始めています。もっとも、無制限に自由に飛ばせるわけではありません。①航空法(飛ばすルール)、②農薬取締法(まく農薬のルール)、③農水省の安全ガイドライン(まき方のルール)という三層の規制が重なります。
第一層:航空法
機体重量100g以上のドローンは、屋外で飛ばすには機体登録が必要となります。また、農薬散布は「物件の投下」に当たり、農薬は「危険物」の輸送にも該当し得るため、原則として国土交通大臣の許可・承認が必要な「特定飛行」となり、飛行計画の事前通報も求められます。
ただし、2026年3月施行の通達により、機体認証を受けた機体を、技能証明を持つ操縦者が、自己や関係者の農地の上空で作物の上端から4m以下の高さで飛ばすなど、所定の要件を満たして行う農薬等の空中散布は、この承認が不要になりました。承認が不要でも、飛行計画の通報と飛行日誌は引き続き必要で、また、2025年10月からは、総重量25kg以上の機体について第三者賠償責任保険への加入も必要となっています。散布ドローンは農薬・バッテリー込みで25kgを超える機種が多く、実務上は保険加入が前提といえます。
第二層:農薬取締法
ドローンでまく農薬も農薬取締法の規律を受けます。無登録農薬は使用できず、登録農薬でもラベル記載の使用基準(作物名・使用時期・使用量・希釈倍数など)を守る必要があります。ドローン散布に対応した農薬かどうかは、ラベルのほか「農薬登録情報提供システム」で確認することができます。
第三層:農水省の安全ガイドライン
農水省の安全ガイドラインは、散布高度は作物上2m以下とすることなど、安全・適正な散布の目安を示しています。散布計画書の農水省への提出は現在は任意ですが、事故時の都道府県への報告は必要となります。地域ごとに事前連絡等の運用が異なるため、都道府県・市町村のルールの事前確認も重要です。
おわりに
規制は多層的ですが、国は官民協議会や補助事業を通じて農業用ドローンの普及を後押ししており、農水省・国交省共同のQ&Aなど実務資料も整っています。受託散布や導入支援を行う事業者にとっては、これらの規制と手続を利用規約・受託契約の責任分担に落とし込んでおくことが重要です。ドローン関連サービスの契約・規約のご相談は、お気軽に当事務所までお寄せください。